「いわゆるゴシック」を蹴飛ばしながら原理主義的な考え方を身につける話をしよう。
Auramorteの蟻坂(@4risaka)です。ご機嫌いかが。
ゴシックを考えるときに陥りがちなことは、色やモチーフ、アイコンといった表層的な記号に囚われてしまうこと、だと思う。 だけど、ゴシック&ロリータにしろサイバーゴスにしろ、彼らの格好や振る舞いを「それ」たらしめているのは、それらの記号ではなく思考や哲学、すなわち「ハート」だよね。
というわけで、創作でゴシックを標榜するときは、ハートの存在を確認する必要がある。そこで、ハートの存在を認めるのに使える簡単な問いかけを紹介してみよう。
問い1: なぜ「十字架」?
ゴシックパンクなアクセサリーにありがちな「十字架」。さて、なぜ十字架を選んだのかな?
- 信心深い
- 霊的なものを予感させる
- 「交わる」という図形に意味を感じる
なんでもいい。自分で文脈を説明しきることができるのであれば。個人的には悪魔に近い癖に何で悪魔祓いの道具を気に入ってんだ、と思ったりもする。
それについても明確な反論ができれば、それでいいんじゃないかな。逆さまに付けているからアンチなんだ、とかその程度でもいいから。
ところで十字架はよく見るのにニンニクは全く見ないね。やっぱり見た目で選り好みしてない?ねえねえ。
問い2: なぜ「薔薇」?
薔薇といえば、石を投げたらどっかのゴスにぶつかるくらいその辺にわんさか生えているイメージがある(暴言)。これも冷静になって文脈を考えてみよう。
- 青い薔薇は不可能を表す
- 薔薇は美しいが棘がある
……などなど、たぶん文脈にできる要素はたくさんあるのだけれど、やはり多用されていただけあって極めて安っぽいイメージになりやすい。
だから逆に、これだけその辺にあるモチーフである薔薇を敢えて使う理由を説明できたならば、非常に格好良いし、ゴシックを感じるよね。だからこそ、使うからには必ず、この見出しの問いには答えられるようにしておかないといけない。
ちなみにフランスの花はユリなので気をつけてね。
問い3: なぜ「蝶」?
蝶もかなりよく見る。だけどこれも、僕に言わせれば「蛾じゃだめなの?」と質問したくなるタイプ。いや蛾も蝶もパッと見違いがわからないので「蛾です」って言われたらそれまでなんだけど(?)。
- 蝶は美しくも儚い
- 幼虫の醜い時期を耐えた結果である
- 花の蜜を吸うおしとやかな印象
個人的には蝶より蛾の「一般的にこっちのほうが醜い」と云われているイメージの方が、除け者にされつつも強く生きるところに孤高のイメージを感じるし、毒の鱗粉なんかで身を守るところなんかデカダンスでよろしい。
あと蝶より蛹だね。永久と孤高のアイコンになりうると思うし、それが美しいと思う。表面的な綺麗なんて、世俗の「Cawaii」とやらと本質的に変わらないんじゃないかな。
問い4: なぜ「チェンバロ」?
ハープシコードとも言うバロック時代の上品な音が鳴る楽器だね。これはゴシックを標榜する音楽に多いんだけど、慎重になりたい今日このごろ。
- クラシカルな響きでストリングスと相性が良い
- クラシカル→古風、古き良きもの、ファンダメンタル
- クラシカル→中世→貴族、洋館、退廃
書いてみて思ったけどこれも難しい。まず楽器としても強さの調節ができないとか和音が鳴らないとかクセが強いし、そのうえでバロック期のクラシックに使われていたわけだから、本気で理解しようとするとかなり教養が要求されちゃう。
そんなこと考えないで雰囲気作りに使うことは簡単だけど、果たしてそこにゴシックハートは存在するだろうか?
ちなみに僕は「ピアノをピックで引っ掻いた音の音源」という変な音源を使って微妙に主旨を外していたりする。
終わりに
言い始めたら際限がないので適当に切り上げようね。
ゴシックは生き様であり、芸術であり、哲学であるから、全てに文脈的な説明が必要なんだ、というのが原理主義的な僕の考え。説教臭いでしょ?
だけどね、記号的なモチーフに取り憑かれるのは、「みんなと同じ幸せ」を望む世俗そのものだと思うんだ。