おもに小説、ゲーム、漫画などの創作の物語構成全般に使える本の紹介。
Auramorte(@Auramorte)の中の人、蟻坂だよ。ご機嫌いかが。
ここのところ、個人的な趣味として音楽制作のほかに脚本のようなことをやっているのだけれど(特に公開予定はナシ)、その際の伏線とかどんでん返しなど「物語を面白くするエッセンス」だとか構造についてよく知らないことに気づいたので、それを勉強する本を紹介してみるよ。同人とかハイアマチュアのストーリープロットの参考になればいいな。
おすすめストーリー構成ハウツー本
まえがきはほどほどに、ささっと紹介するよ~。
1.仲村みなみ『どんなストーリーでも書けてしまう本』
いきなり魅惑的なタイトル。「右も左も分からない」というレベルの人におすすめ。この本がわかれば次節以降にさっさと行ってもいいと思う。
まず最初に、ストーリーを4つの類型に分類することから始まる。
- 自分の意志で自分のために動く
- 自分の意志で他人のために動く
- 他者の意志で自分のために動く
- 他者の意志で他者のために動く
正確には2かける2の組み合わせだね。これは具体的に言うと、たとえば「家族を人質に取られたので救出に向かう」は「他者の意志で他者のため」、「最強の称号を手に入れるために闘技大会に参加する」は「自分の意志で自分のため」みたいな感じ。
結局ストーリーの根幹をなす目的がどうやって与えられるかを明確にするための類型ってことだね。何のためにキャラクターが動くのかを考えるときに使えると思う。
6W2Hによるマトリクスで誰が何のために何をするのかを大雑把に決めるシートもある。最初にこういう概略を作り上げて、そこに肉付けするかたちで書いていけば、根幹から逸脱してよくわからない物語として発散する可能性を潰せるんじゃないかな。
レベル的にはさっきも言ったとおり初心者向けって感じ。
2.大塚英志『ストーリーメーカー』
「読むな、使え」というキャッチコピーが印象的な本。
そのキャッチの通り、この本は前半にストーリーの題材の解説、後半に「ストーリーメーカーというツール」としての記述という分け方になっている。
前半が個人的に読み応え十分、というか非常に素晴らしいポイントを抑えていると思っていて、
- ジョーゼフ・キャンベルの『千の顔を持つ英雄』
- ウラジーミル・プロップの『昔話の構造 31の機能分類』
といった「シナリオを本気で勉強する人が絶対通っているであろう古典」の内容を一通りなぞっているんだよね。
詳しくは本の中身に譲るとして、僕は当初「プロップくらいは読んどかないとだめかなぁ、でも売ってないんだよなぁ」と困っていたんだけど、この本に大体の説明があるので、少なくともアマチュアで何か創作するなら用事は十分に果たせると思う。
そしてキモは後半の文章。「ストーリーメーカー」の名を冠するだけあって、30個の設問に答えていくと大体それっぽい展開ができあがる。なんじゃそりゃって感じだけど、前半に述べた体系に沿って論理的に考え抜かれていて、主人公のキャラクターや物語の目的、動機といったものを、あまり深く悩まずにシンプルに記述できるという点において強力な手助けになってくれる。
ただし、前節の『どんなストーリーでも書ける本』と同じで「根幹部分の記述」に特化していると思うので、肉付けのためにはやはり取材が欠かせないね。どっちにしようか迷ったら個人的にはこっち。ただし活字どっさりなのでそのつもりで。
3.Josiah Lebowitz, Chris Klug『おもしろいゲームシナリオの作り方』
最後に応用。ゲームというインタラクティブなものから見たときのシナリオのつくりかたの話。
これは割と読み物的な側面も強いので、シナリオ作らない人にもおすすめしたい。なにしろ著者が外国人なのにサンプルがほぼ全部日本のゲーム。しかも「FINAL FANTASY」のような有名作品が多いので、「ああ、そういうことか!」と頭に入りやすい。
ゲームの場合、主人公が自律的ではなくプレイヤーが操作するということによって、「プレイヤーが物語に介入する」という新しい切り口が出てくる。このとき、じゃあ面白くするならどうしようね、という話。
具体的には、
- メンター(世界観とか知識・技術というような世渡りスキルを教えてくれる人)の存在
- 一本道ストーリー~オープンワールド という類型
といった「プレイヤーを主軸に備えて物語を導く」というところにフォーカスしている。ほら、難しかったり遊んでて面白くなかったら途中で投げちゃうでしょ。ああならないためのゲームデザイン的な話。
……まぁでも、とりあえずこの本に限って言えば読んでて面白いんだよね。日本のゲームを徹底的に分析してるところが素晴らしい。RPG、アドベンチャー、なんでもあるよ。
おわりに
作曲と比べて作詞が簡単にできることに思われるように、どーにもこういう「紙とペンだけでできるふわっとした創作」というのは「簡単に試される」感があるんだけど、実のところかなり奥が深い。
チープにならないためにも物語創作をするならしっかり掘り下げた考え方ができるようになれたら格好いいね。