高原英理さん無双になってしまった。
Auramorteの蟻坂(@4risaka)です。ご機嫌いかが。

ゴシック文化にまだ足を踏み入れた人にとって、そもそもゴシックというのはどういう状態のものを挿すのか、どういう考え方のことを言うのか、漠然としていてよくわからないと思う。僕もそうだったし。

こういうときは、自分で考えることと行動することが大事なんだけど、それらの方向性を補完するために、ゴシック文化をなんとなく理解できる本をおすすめしてみるよ。

1. 高原英理『ゴシックハート』

ええと、正直バックグラウンドを知るだけならこれ1冊で十分。2004年刊行で最近文庫が出た最強のゴス文化評論本。

ゴシックという言葉の由来から、その文化の成り立ち、そしてゴシック文化を構成する属性である「怪奇」「様式美」「残酷」「異形」「人形」「廃墟」「幻想」といった外せないキーワードについて章立てで分析されているよ。

よくある「ゴス」と聞いて思い浮かべるステロタイプな要素に対して「なぜ、それなの?」という疑問は思い浮かぶでしょ。それに適切なバックグラウンドを膨大な資料を根拠に突き詰めていく様は、文化の土台を理解するにあたってとっても参考になると思う。

「なんとなくゴス」にはならないはずなんだよね。僕達が「ゴシックでなければ生きられない」と言う「理念」と「条件」を把握する一冊。

2. 樋口ヒロユキ『死想の血統 ゴシック・ロリータの系譜学』

ゴシックハートに続く評論本、特に「ゴシックロリータ」の方にフォーカスしているよ。

結局ルーツはどこか?という話は諸説あって、それを色んなフィールドワークでもって明らかにしようとしているのだけれど、『ゴシックハート』のような「ゴスに寄り添うような評論」というよりかは、淡々と書いている印象。そしてエログロ寄り。

特に面白いのは、サディズム・マゾヒズム、グロテスク、そしてオタク文化にも踏み込んだ周辺文化のレポートがある。これはゴスロリ評論としては中々特殊(といっても絶対数が無いけど)かも。少なくとも彼ら彼女らはヒトでしかないのだから、周辺の世俗を完全に切り離して語ることはできないわけで、中々ユニークな観点だと想う。

でね、著者の樋口さんは美術評論家なのだけれど、なんというかいちいち文章が耽美なんだよね。この文体と様々な取材・分析から受け取れるのは、文中にもあるけれど「悪の哲学」だと想う。

というわけで、この本で「意志」と「哲学」を知ることができるはず。

3. 高原英理(編)『リテラリーゴシック・イン・ジャパン』

ふたたび高原英理さん、別の記事でも紹介したけど、これは小説のアンソロジー。

表紙に人形作家、中川多理さんの人形。既に蠱惑的なオーラを放っているね。

掲載されているのは高原さんが選択した「ゴシックを感じた文学」。これを聞いて、まだ読んでいないあなたは一体何をイメージするだろう。少女性?ヴィクトリアン・ゴシックの高貴なイメージ?

そんなステレオタイプでは語れない死と残酷、永遠の中のデカダンスというのが凝縮されている、そんな活字の数々。

ポイントは三島由紀夫などの日本文学作品が結構あること。ゴシックというのはスピリチュアルな部分に本質があるのだから、やはり服装や登場人物の属性だけでは語ることができない。

だけど、選択された作品群にはどれも一貫した雰囲気があって、感受性のあるあなたであれば「これがゴシックか」と、闇の世界に浸ることができるに違いないよ。そうして「空気」を理解したら、それをインスピレーションに昇華するんだ。

次点

「3冊」とか言っといてもう1冊紹介するよ。なぜ代表選手に選ばなかったかというと、入手困難だから。

高原英理『ゴシックスピリット』

どんだけ高原英理さんをリスペクトするんだこの記事はって感じだけど、本当に日本のゴシック文化をうまいこと評論している人というのは少ない。どちらかというと皆クリエイターになっちゃって、これをメタに分析しよう考える人はなかなかいないみたい。

で、『ゴシックハート』の姉妹本みたいな位置づけのこの本。
『ゴシックハート』 が文化や歴史、属性に関する評論を中心としているのに対し、こっちは美学、つまり作品に重点を置いた評論になっている。たとえば文学、美術。

だからクリエイター属性の人にはむしろゴシックハートよりこっちのほうが直感に訴える部分があっておすすめなんだけど、これを書いている2017年6月現在絶版になっちゃってるので、古本しか手に入れる方法がない。求む、文庫化。

おわりに

3+1冊挙げたけど、実はこれでほぼ全部だよ。ゴシック文化の分析という分野は孤独らしい。

Share:
Bookworm