ピュアな良い子にはとてもおすすめ出来ない本を紹介するよ。
Auramorteの蟻坂(@4risaka)です。ご機嫌いかが。

本というのは、ある人物が考えたり身につけたことをものの数時間でインプットできるので、とっても効率が良い勉強のツール(アウトプットできるかは別として)。

で、もちろん内容には様々あるわけだけど、今日はその中でも特に嫌われそうな内容の本を紹介してみようと思う。

3冊の邪悪で不穏な本

もうタイトルからして魅力的。すごく大雑把に感想文のようなものを述べてみるよ。

許成準『ヒトラーの大衆扇動術』

はい、いきなりタブーだね。

世紀の大悪党アドルフ・ヒトラーは如何にしてドイツ国民を巻き込み、トップに上り詰めたか……その手法を分析した本。

たとえばね、今やどこの政治家も当たり前にやっている「マイクとスピーカーを使った演説」、実はまともに導入したのはヒトラーが最初らしい。

大きな会場で聴衆の一体感を高めるためには、演説を全員に行き渡らせる必要があるのだけれど、それを使うために音楽のフェスのような大掛かりな設備を導入するという発想が今まで無かったというのが驚きだね。

この他、政治という堅苦しい運動を荘厳な垂れ幕やカッコイイ軍服に紋章、そして嫌でも耳に残るようなワンフレーズの繰り返しを主体とした(最もレベルの低い者でも理解できるようにした)演説。こんな風に、多くの人を動かすための様々なお膳立てをエンターテイメント的に整備した……というのがかの悪党の徹底したスタイルだったようだね。

そこの人間観察が好きなあなた。悪のカリスマが手のひらの上で大衆を動かすその様を理解しておくと、今後役に立つと思うよ。

架神恭介『よいこの君主論』

おつぎはマキャベリズム。……の入門書。

本家ニコロ・マキャベリの『君主論』は小難しい文体なので、最初は入門書を推薦するよ。なかでもこの本は教室を国としてその中で覇権を争うクラスメイト達の争いを描くという異色作。

だけど本質は捉えていて、君主としてあるためには人をどう扱うかというのが要点を絞った形でわかりやすく説明されている。

先程の『ヒトラーの大衆扇動術』もそうなんだけど、共通しているのは人間を淡々と取り扱うということ。民衆はこんなんだからこうしとけばいい、傭兵はこういう理由で役に立たない、よその君主を取り込んだときはこうすれば良い……など、それぞれの社会的立場に淡々と分類して、彼奴らの利害はこうだから、と一切感情に踏み込まないで利害関係から上手く誘導する方法を知ることができる。

こんな風に一般大衆からしたらすごく不快な論理なので、出たばかりの時は「悪魔の書」だとか言って批判の的になったのだけれど、資本主義はこれを受け入れているのが現実。「人の動かし方の本質」として知っておいて損はないんじゃないかな。

人間嫌いでしょ?だけどそういうあなたは観察したり操るのは好きなはずなんだ。おひとつどう?

中島義道『善人ほど悪い奴はいない』

最後は刺激的なタイトルの一冊。土台は偉大な哲学者……というより人間観察のプロであるフリードリヒ・ニーチェの考え。

ここで定義する「善人」とは何か?そこの貴方ならなんとなく気づいているはず。もう色んな所から引用したいんだけど、1章から。

あらためて確認しておこう。善人が悪事をなさないのは、それが「悪い」からではない。ひとえに社会から抹殺されたくないから、つまり悪をするだけの勇気がないからである。社会に抵抗してひとりで生きていけるほど強くないからである。
それにもかかわらず、彼らは「良心がとがめるゆえに悪いことをしない」のだと思い込んでいる。どこまでも(ずうずうしくも)自分を美化したいのだ。
善人の最大の罪は、鈍感であること。つまり、自分自身をよく見ないこと。考えないこと、感じないことである。

どう、ピンとくるでしょ。この文言を初めとして、中島氏による「善人」批判は滔々と続くのだけれど、後半でニーチェを支持する人特有のパターンを鋭く突いてくるので一瞬どきっとする。詳細は読んでみてのお楽しみ。

ここでいう「善人」はれまでの2冊でいう「大衆」の概念に通じるものがあるから、マス的に「人間」というものを観察するにあたって、その認識を確認するのにおすすめの一冊。

おわりに

最近、心の底から悪であった人の考え方を知るのにハマってるので、どうしてもこういう本に惹かれるところがある。

あとはほら、それこそ「ピュアな良い人」の無意識な残酷さに潜む、数々のグロテスクな良識たちにもぞくぞくするよね!

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Bookworm